東京滞在中、友人に面白いお店に連れて行ってもらいました。
創作料理のコースで、日本酒とお料理を一品づつマリアージュで楽しめる「HuQu(フク)」というお店です。
大塚の有名おにぎり屋さんの近くにある「HuQu」は昼間は「らあめん あるじく」というラーメン屋として営業されています。それが夜になると完全予約制の創作コース料理のお店に変身します。
店内はラーメン屋とは思えないオシャレな空間で、ラーメン屋よりも夜の営業に重点を置いているのが分かりますね。店内あちこちに飾られたドライフラワーがかっこいい。
1日6人ぐらいまで対応可能とのことでしたが、今回は5人で貸し切りさせていただきました。
お食事を始める前にまずはグラスビールで乾杯。なんだかワクワクする瞬間ですね。
横に置かれていた紙はメニュー・・・というか、今回使用する素材と順番です。
料理名ではなく素材名ということで、この素材がどのように使われて出てくるのかと考えるのが楽しい。そして想像もつかない方法で調理されて出てくるので二度驚かされることになります。
「蓮根」と書かれたお料理の正体はレンコンチップスでした。
手作りのラベルが貼られた紙袋が出されたときは「ふふっ」と笑ってしまった。インテリアの雰囲気と違って可愛いスタートだなぁ。
中身は国産蓮根をスライスして揚げただけのシンプルなチップス。なんの味付けもされていないのにめちゃくちゃ美味しい。素材を楽しむってこういうことかぁ。
次のメニューからは日本酒とのマリアージュをコンセプトに考えられたペアリング料理です。
日本酒は秋田県 阿桜酒造の「阿櫻 あざくら もぎたて りんごちゃん 特別純米 無濾過生原酒」。フレッシュでジューシーな低アルコール酒なので食前酒にピッタリ。
そしてこれに合わせるのが・・・。
素材は「梅 浅利 りんご」。とってもキラキラした小鉢(グラスですが)で、アサリを炊いたものにイクラの形をした梅ジェル、その上にキャビア。
こんなに洋風な見た目なのに、出汁を感じるアサリにと一粒づつ注射器で作ったという梅ジェルがなんとも和風な味わいです。キャビアの塩気が丁度いい。
続いての日本酒は福島県 曙酒造の「天明」・・・なんですが、ただの天明ではなく、即醸の中取りと生酛造りの2種類をブレンドして常温で1年間熟成させたものらしい。
しかもそれを燗付けして出してくれます。
ブレンドだけ、冷蔵で熟成だけなら色々と試したことはあるけど、ブレンド、常温熟成、燗付けとトリプルびっくりです。味は濃厚な米の旨味と軽やかな酸、そして燗によって立ち上る芳醇な香り。表現は難しいけどとにかく味わったことのない美味しさです。
それに合わせる素材は「ホワイトアスパラガス 蕗の薹」。ホワイトアスパラガスの茶碗蒸しに「天明」を醸す曙酒造の近くで取れた蕗の薹を使った蕗味噌が乗っています。
甘く柔らかな味わいのホワイトアスパラガスの茶碗蒸しと蕗味噌のほのかな苦味が、日本酒の複雑な旨味を上手くまとめてくれる。この組み合わせは美味しいぞ。
続いての日本酒は福井県 美川酒造場の「舞美人 純米 酒粕再発酵酒 MYVY(マイビー)」。
このお酒はとっても変わっていて、一度搾った酒粕を醪に入れて1年間熟成・発酵させ続け、再度搾った純米酒。日本酒の甘さなどを示す日本酒度はなんとマイナス154。昨今の辛口ブームとは真逆な日本酒で、口に含むと梅酒のような甘さと酸がとろっと広がる面白いお酒です。
合わせる素材は「初鰹 酒粕」。こっちにも酒粕がありますね。
薄いタルトカップに酒粕のクリームを敷き、初鰹を煮切り醤油で和えたものを乗せ、新生姜の甘酢漬け、ミントを添えたもの。
ほのかに甘い酒粕クリームと初鰹にねっとりとした旨味がとっても合う。新生姜やミントを一緒に食べると爽やかさがプラスされて更に味変。面白いなぁ。酒粕カケル酒粕の相乗効果で旨味倍増ですね。
ここで長いお皿にもられた「八寸」が出てきました。
要するにおいしいものがちょっとずつ乗った「おつまみプレート」ですね。八寸を肴に日本酒をチビチビやるというのは日本酒好きならたまりません。
というわけで右から、クリームチーズの味噌漬け、麻婆茄子、きんぴらごぼう、ローストポーク金山寺味噌添え、くじらの竜田揚げ・・・
高野豆腐、からすみ、ヒラツメガニの唐揚げ、ホタルイカの沖漬け。
どれも塩味と旨味が強いものが多く、酒が進む進む。
この八寸に合わせるお酒は何かな?と思ったら日本酒のリストが渡されました。
八寸ではこのリストから好きなお酒をチョイスし、いろいろな肴とのマリアージュを自分で見つけ出そうという試みのようです。
9種類の肴に12種類の酒・・・無限大のマリアージュです♪
秋田県 阿桜酒造の「阿櫻 特別純米 無濾過原酒 超旨辛口 +10」
宮城県 大沼酒造店の「不二正宗 純米吟醸 酒未来、生原酒」
福島県 廣木酒造本店の「飛露喜 吟醸 渡船弐号」
神奈川県 大矢孝酒造の「残草蓬莱 純米吟醸 Queeen(クイーン) 槽場直詰生原酒」
石川県 鶴野酒造店の「谷泉 純米 無濾過生原酒 Orangeラベル」
三重県 早川酒造の「田光 純米吟醸 荒走り 生 神の穂 First Kiss」
滋賀県 美冨久酒造の「三連星(白)純米吟醸 生原酒 中取り」
奈良県 美吉野醸造の「蔵王桜 純米大吟醸」
兵庫県 山陽盃酒造の「播州一献 純米超辛口」
岡山県 十八盛酒造の「penguin no kimochi 無濾過生酒」
鳥取県 久米桜酒造の「久米桜 純米大吟醸 スイカの花」
佐賀県 東鶴酒造の「東鶴 Spring Sun 純米」
なんとも様々な味わいの日本酒がいっぱいで・・・あれこれマリアージュを楽しむので精一杯。お酒それぞれの味わいをあまり覚えていません(笑
でも、田光とくじら、三連星と高野豆腐の組み合わせが良かったな〜ってのは覚えてた。
気を取り直して続いてのマリアージュは、
福島県 松崎酒造の「廣戸川 特別純米」。言うまでもなく有名なお酒で、柔らかでフルーティな香りとスッキリした味わいでバランスが良くとっても飲みやすい。和食に合うお酒としては優等生な味わいですね。
というわけで素材も「出汁」。
でも出汁といっても汁物ではなく「マッシュルーム豆腐の揚げ出し」です。マッシュルームを葛で固めて揚げ出汁にしたもので旨味の爆弾かってぐらい出汁とキノコの旨味がすごい。優等生な廣戸川だからこそ引き立つ旨さって感じでしょうか。
次は、奈良県 美吉野醸造の「HANATOMOE 水酛×水酛」。貴醸酒と同じようにお酒でお酒を醸す製法で作られたもので、水酛独特な乳酸をぐぐっと感じる大人のりんごジュースのような味わい。これだけでは濃厚すぎるので、ソーダで割ってさらに燗付けしているという。
爽やかだけど温かいって面白い。
そんなほわっとふんわりな酸味に合わせる素材は「鰤」。
石川県であがった10kgクラスの鰤をレモングラスや黒酢でエスニックに仕上げた、ちょっと変わったブリ照りです。
和食にはない独特のクセが上手く引き立った黒酢ソースに脂の乗った鰤の柔らかな淡白さがめちゃくちゃいい。お酒の酸味で脂っぽさも感じずすごく美味しい。
次はなんだかウイスキーのようなお酒が出てきました。
兵庫県 江井ヶ嶋酒造の「日本魂(やまとだましい) AGED BY THE SEASIDE」。
聞き慣れない酒造所だけど、ウイスキーの「あかし」を作っているところなんですね。
これは純米原酒をオークの新樽に入れ、海辺の倉庫で1年半常温貯蔵したしたものです。ウイスキーを作っているところだけあってそのクオリティはさすがです。まろやかでウッディな味わいは本当にウイスキーのよう。
濃厚なバニラのような味わいに合わせる素材は「蝦夷鹿」。
2週間熟成させた蝦夷鹿をローストし、燻製玉葱のソース、上にはウッディナッティというナッツのような風味のあるスプラウトが添えられている。
しっとりと柔らかな蝦夷鹿はクセもなくとっても美味しい。ソースとスプラウトがウイスキーっぽい日本酒との架け橋になっている感じ。こんなの他のどの店に行っても味わえないなぁ。
最後の素材は「鯵煮干し」。〆のラーメンです。
昼間のラーメン営業で出されているものと同じく化学調味料不使用のきれいなラーメンで、鯵煮干しを使ったスッキリシンプルな味。ラーメンが苦手なオレでも汁物のようにスッと身体に入ってくる美味しさです。
まさか〆のラーメンにペアリングはないよな?と思っていたら、
岐阜県 渡辺酒造の「MINONISHIKI No.513 山廃純米 無濾過生原酒 ピンクラベル」
が出てきました。五百万石を使用した柔らかな米の旨味が特長であっさりだけどこっくりといった感じ。
他にも
福島県 曙酒造の「天明 MITSUGO 「黄」 貴醸酒」
島根県 板倉酒造の「天穏 春の月 微発泡 純米吟醸 にごり生原酒」
も出してくれた。なんとこのコースでは店中のお酒(一部除く)が飲めるんだという・・・何という至福。
最後は甘味で終了。
イチゴとキンモクセイのギモーヴ、チーズケーキ、胡桃とレーズンのカカオ、たまごケーキとどれも洋風ながらもこの店にある日本酒ならベストマッチが見つけられそうな曲者スイーツですね。
まずは店主オススメのマッシュルームで
奈良県 大倉本家の「大倉 水酛 純米 DOLCE(ドルチェ)」。これだけでスイーツのようなリッチでふくよかな酸味をもつ日本酒です。
うん、間違いなく合う。
先に紹介した「天明 MITSUGO」もチーズケーキに合うなぁ。
「店中のお酒が飲める」と聞いて、出してもらった以外になにかありますか?と聞いたら
茨城県 青木酒造の「御慶事 特別純米」を出してくれました。
素直な辛口純米酒で「日本酒ってこうだよね」と何も考えずに味わえるお酒。
まだまだあります
徳島県 那賀酒造の「旭若松 純米無濾過生原酒 紺ラベル」。
地元酒として長年愛されていると言うだけあって、今どきのモダンな造りではなく芳醇でどっしりとした旨味と高アルコールで切れのあるのみ口。男らしい味わいですね〜。
こんな感じで、この日はなんと23種類の日本酒をいただくことが出来ました。
こんなにたくさんの日本酒を、それぞれマリアージュを楽しみながら呑んで食べて12,000円は安いでしょう。お客さんのほとんどが次回の予約を入れて帰るという。オレも次回東京に来る時にタイミングが合えばと約束して店を後にしました。
ここはまた絶対来たいな。
次回はどんなお酒に出会えるのか、どんな旬な素材に出会えるのか楽しみです。
誘ってくれたYさん、ありがとうね!また飲みましょう!
HuQu ふく 創作和食と日本酒
東京都豊島区北大塚1-19-1
03-6903-6133
営業時間:[火、水、金] 19:00 一斉スタート
[土] 18:00 一斉スタート
定休日:日曜日、月曜日